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4月, 2023の投稿を表示しています

フェールセーフは信頼性を下げる

<はじめに> フェールセーフ(fail safe)とは、万が一機器が壊れた時に安全側に動作させる設計の事です。 これを採用する事で、安全性は上がりますが信頼性は下がります。 フェールセーフは故障に対しての方策なので信頼性が上がると錯覚しがちですが、その逆ですので気をつけたいところです。  <信頼性と安全性の関係> 信頼性とは故障しない事ですので、 安全性とは少し違います 。安全性は故障の有無にかかわらず安全であるか否かを意味します。ですので信頼性が下がるとは故障率が上がる事なのです。故障率が低ければ安全性も上がるので、信頼性を上げれば安全性が高くなると言えますが、信頼性が低くてもフェールセーフ等の安全策を付加すれば安全性は確保されます。 ですので必ずしも「信頼性=安全性」とはならないのです。 ・信頼性↑➡︎安全性↑(正) ・信頼性↓➡︎安全性↓(誤) <信頼性が下がる理由> フェールセーフという機能を追加する事により、余分な機能や部品が追加されるわけですので、その分の故障率が上がります。 機能や部品点数が多いほど故障の機会が増えますので、故障率が上がるわけです。 <信頼性と安全性は切り分けて考える> 故障率を下げることで安全性を上げるのは当然の事ですが、それでも機器の故障は免れないので、それに備えて安全機構をつけておくわけです。 しかし、その機構が信頼性(故障率)の足を引っ張るという事を忘れてはいけません。 これは フェールセーフだけでなく故障検知機能も同じ です。 異常検知機能の信頼性が高ければいいですが(ストーブ等の機械式の転倒検知など)、センサーのような誤作動が多いもの(或いは設定条件が難しいもの)は、環境や使われ方によって誤検知が頻発する可能性があります。 <フェールセーフや検知機能の必要性の検証方法> 故障という意味では、本来機能も付帯機能であるフェールセーフや異常検知機能も重みは同じです。ですのでそれらの機能の設定は慎重にすべきです。 H3ロケットの第二段エンジンが着火に失敗したケースは、過電流検知が作動して電源を停止させた為とあります。既に上空にいるロケットに対して異常対策として電源停止する事に何の意味があるのでしょう。 誤検知であった可能性を考えれば、過電流検知しても電源を停止させる必要はなかったのです。 本当に過電流だったとしても、もうどうしようも...

交流(虚数iは何の為にあるのか)

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複素数は、2次元平面上の点を表しています。たとえば、a+biは座標が(a , b)の点を表します。aは実部、biを虚数部と呼びます。実部と虚数部は独立しているのでa,bの間の+は、足すという意味ではなく、bの正負を表しているだけです。 そしてこの式にiを掛けると、座標の点が原点を中心に反時計回りに90°移動します。-iを掛けると、逆に時計回りに90°移動します。これはiの2乗=-1と定義しているからです。(下記例を参照。y軸が虚数部です) 虚数の虚は「実態がない」ことを表しますが、なぜそんな表現にしたかについて、明確な理由が書いてある物を見た事はありませんが、たぶんこうだと想像します。下図のように円運動を上から見ると(タイヤに例えると横からではなく接地面を見る方向)、x 軸上の直線往復運動に見えます。往復運動ですので両端では一時停止して向きを変えます。 しかし円運動としてはその瞬間も止まっていません。それどころか、その瞬間のy軸上の速度は最大になっているわけです。ですので、y軸上の動作はx軸上での観察に現れない虚像という事ではないでしょうか。 電子の世界では虚数部のiはjと書きあわらします(iだと電流と同じになるので)。コンデンサとコイルの位相差は90°なので、jを使った式がそれを表すのに都合が良いわけです。 目次に戻る

チャットGPTは本当に凄いのか

チャットGPTの凄さとは何でしょうか。私たちはそれを誤解してる様な気がしてなりません。確かに凄いかもしれませんが、その凄さに比例した有益性が得られるでしょうか。 技術の凄さと有益性は必ずしもイコールではないわけです。 何故チャットGPTが凄いと感じるのか?  「人みたいで凄い」というだけのような気がします。 人が言葉を喋るのは当たり前ですが、鳥が喋るとすごいと感じます。それと同じでチャットGPT(以下GPTと書きます)という進化したチャットボットが、まるで人のような回答を出す事は凄いと感じます。 人みたいで凄い物をもう一つ紹介します。(下記リンクの動画を見てください) 人型ロボ アトラス まるで人のような動きができるテクノロジーには驚愕します。しかしこのロボット、人と同じ仕事ができるでしょうか。 今は出来ていません。事前にプログラミングした動作なら動画の様にこなせますが、自在(自発的)に動作させるフェーズではないのです。 「人の動作そっくりで凄い」事と、「(実務として)人と同じ事ができて凄い」では意味が違います。 チャットGPTの回答内容は凄いのか? GPTの回答内容は、巷にある情報を取り繕って出力している訳ですので、せいぜい常識レベルの回答でしかないと言えます。つまり普通の事以上を知る事はできません。ネットで開示されている情報をソースとしているのですから当然です。 またGPTは 文章生成能力が非常に優れていますが、文中の情報の正確さに大きな問題があると感じます 。ですので、検索には向いていなく、文章にまとめさせる使い方にしか適用できないかもしれません。 文章があまりに優秀すぎてあたかも中身の情報も正しいような錯覚を受けますので注意が必要です。 凄い技術は有用とは限らない 前述のロボットもGPTも技術としては確かに凄いのですが、有用ではないのです。  つまり技術は革新的ですが、革新的な仕事は出来ないと言えます。ロボットの方はハードは完璧なのにソフト(制御)が追いついていません。GPTの場合は回答の質が汎用の域を脱する事ができません。(精度はいずれ学習して良くなるのかもしれません)。 私たちは、「凄い技術=凄い仕事ができる」という思考に陥りがちです。 技術は革新的であるが、その技術で革新的な仕事が行えるのか。 そこを考えた上で評価すべきと思うのです。  結論 最終的に...

電子回路における動的平衡の重要性

身の回りには、止まって見えていても実は動いているものが多くあります。静止させる為に動かしているといった方が正確かもしれません。 この場合の「動かす」は移動の意味ではなく、力が働いているという意味です。 綱引きは、力が均衡(平衡)している(釣り合っている)と静止するわけです。しかし力が何もかかって無くても静止します。 重要なのは、 その静止状態が何も力が働いてなくそうなっているのか、力が均衡してそうなっているのかという事です 。 タイトルに示した動的平衡という言葉は色々な意味で使われますが、総じて言えば、常に動いているもの同士が全体としてバランスがとれて均衡が保たれている状態の事です。 これは電子の世界にも当てはまると思います。 代表例としては電源があります。電池などはそれに当てはまらないかもしれませんが、回路として組まれた電源は全て該当します。 定電圧源であれば一定電圧を出し続ける場合、電圧値が変わらないので何も動いていないと感じてしまいます。(ここで言う「動いていない」は、staticの意味です)。 例えばポテンショメーターのように分圧で電圧値を決めて、その設定を維持し定電圧を出続けるようなイメージです。 しかし、実際はそうではなく、負荷変動によって起こる電圧変動を抑える為に、常に電圧を変化(調整)させています。綱引きで例えれば、相手が引く力が常に変動していて、それに合わせてこちらが引く力も調整し、綱が動かないようにしています。 制御されている電圧(電流)は、すべてこの原理に従っています。 そしてこれは、電源をはじめとした フィードバック回路系全てに当てはまります 。 フィードバック系を大雑把に表現すると、目標値を境に行ったり来たりを常に繰り返す動作をするものです。 普通は、行ったり来たりの幅が限りなく小さい(≒0)ので、目標値に張り付いて静止している様に見えます。 しかし制御がうまくいってないと、この振幅が大きくなり発振しているように見えます。 動的平衡は電子回路を考える上でとても重要な概念だと思います。 蛇足ですが、電子以外に動的平衡が働いているものとして、電力、水道、恐らく都市ガス等もそうだと思います。 つまり使用量が時間帯によって変動するので、それに合わせて例えば水道であれば水圧を強めたり弱めたりして、蛇口から出る水圧を一定に保つわけです。 目次に戻る