オペアンプ 仮想短絡の理由(式を使わず概念で理解できる)

はじめに 

オペアンプの仮想短絡(イマジナリショート)は、オペアンプ内部でそうしている訳ではありません。外付けの負帰還回路とコンパレータロジック(オペアンプのロジックはコンパレータと同じ)が引き起している現象です。

全てはまず、基本ロジックを認識し、それに基づいて考える事が重要だと思います。
そして、デジタルIC(オペアンプ)がなぜアナログ出力になるのかを考える事も、理解する上で重要なポイントになります。

オペアンプのロジックは、コンパレータと全く同じです。それさえ認識していれば、仮想短絡(イマジナリショート)や増幅率無限大の概念は、式など使わず理解できます。


では詳細に考えていきます。

コンパレータのロジックは、+端子と−端子を比較して+が大きければHi、逆であればLoを出力する実に単純なロジックです。 それを基に仮想短絡と増幅率無限大を考えます。


仮想短絡
 仮想短絡とは+端子と−端子が同電位になる特性ですが、これはオペアンプの中でそのようなロジックが組まれている訳ではありません。オペアンプのロジックは飽くまでコンパレータと同じです。 外付けの負帰還回路構成が、そう(仮想短絡)させているだけです。

負帰還回路で一番シンプルなボルテージフォロワで考えれば概念的に理解しやすいです。

                    
これにコンパレータのロジックを適用して考えてみましょう。
例えば、+端子に2Vを入力します。(VDDは5Vとします)。
初期のVout(=−端子)電位は不定ですが、例えば2Vより高い場合、Voutは0Vになります。
帰還されて−端子も0Vになります。
+端子2V、−端子0Vなったので、次の状態はVoutには0→5Vが出力されます。
(デジタルICなので、出力は0Vか5Vしか発生しません)

以降、同じようにロジックを追っていくと、Vout(=−端子)は0V⇦⇨5Vを繰り返し、一種の発振状態となります。 この発振の中心値は2V(+端子電圧)ですが、+端子が何Vであろうと0-5Vで発振するので、この状況では+端子の電位は何でもいい事になります。

今考えたような反応が遅い状態だと0Vと5Vを往復する矩形波を想像してしまい、
中心値が2Vである事が分からないです。
でも実際は反応速度が速い為、2Vを横切った瞬間にすぐ反転し、0Vや5Vに到達する事なく
2V付近で発振した状態になります。 その振幅が限りなく0に近いと2Vに安定したように見えるわけです。 つまり+端子=−端子(仮想短絡)の状態になります。

負帰還回路は色んな種類がありますが、全てこの考え方が成り立ちます。
負帰還回路のようなフィードバック系のシステムは、全てこのロジックが基本になってますので、フィードバック回路の動作は発振回路と同等なのです。

オペアンプの本質は発振している事だと私は思います。
(実際は振幅が0に近く、現象としては発振はしていませんが、ロジックとしては
 発振していると言う意味です)


増幅率が無限大
 これは、荒っぽい言い方をすると、全てのデジタルICがそうです。
しきい値を超えた瞬間にVDD、下回った瞬間に0Vに張り付く特性がまさにそれだと言えます。

入力(+端子、−端子間)の僅かな差異を無限大に増幅します。しかし電源電圧で最大・最小が制限されてしまうので、出力はVDD電圧か、接地電圧に張り付く状態になります。


まとめ
 オペアンプの基本は、動作ロジックだけで概念的に理解可能です。それにもかかわらず、
なんとなく分かりにくくブラックボックスとして考えがちです。その理由として私が思うのは、ICはデジタルなのに回路を組むとアナログ動作をするところにあると思います。
デジタルICであるのにアナログ動作する理由は前述の通りですが、これは静的状態では説明できないため、余計に理解を妨げる原因となっていると思います。

NOTEに書いた記事も宜しければ見てください。(内容はほぼ同じですが・・・)

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