トランジスタのハーフオン(半オン)故障

<はじめに> 
 ハーフオン故障(半オン故障)とは、トランジスタを中途半端にON(あるいはOFF)させた状態が原因で発生する事象です。この故障モードは一般的に知られてはいますが、見落としがちな原因でもあります。 故障したICチップの焼損状態から、外部サージによる故障であると誤って報告されるケースが多いからです。 ハーフオン故障はサージ故障ではありませんので、いつまでたっても正しい原因に辿り着けない事になります。


<ハーフオン故障のメカニズム>
 トランジスタ(MOS FET、バイポーラいずれも)は、ゲート(ベース)に中途半端な電圧をかけてONさせた場合、消費電力が大きくなり破壊する可能性があります。
フルON状態であればトランジスタのON抵抗が0に近く電圧降下が約0になる為、電力消費は僅かで済みます。またフルOFF状態であればON抵抗は大になり電流は約0なのでこれも電力消費は僅かで済みます。いずれもハーフオン故障は発生しません。しかし中途半端なON(OFF)は、電圧・電流両方ともかかるので電力消費が発生し故障を誘発する可能性があります。
 
こうなっていない事を確認する為にSOA(Safe Operating Area: 安全動作領域)内で動作させていることを検証して回路設計をします。


<発生してしまう原因>
 トランジスタをスイッチとして使う場合(ほぼこの使い方だと思いますが)、SOAを意識する事は無いと思います。スイッチですのでON時、OFF時の2状態しかなく、前述の通り電力消費は殆ど無く故障しません。 

しかし、ON/OFF状態しか設定していないつもりでも、下記のように意図せずハーフONになっている場合があります。

OFF状態のゲート電位が0Vになっていない。(ハイインピーダンス状態になっている)
 →システムOFFの状態において、ロジック(ゲートに信号送る回路)の電源はOFFしているが
  トランジスタ電源が切れていない場合、トランジスタのゲート電圧は不定になります。
  不定(ハイインピーダンス)は0Vではなく電位が定まっていない状態なので、トランジス
  タがハーフオンする可能性があります。 対策としてはゲートにプルダウン抵抗をつけ
  て、ハイインピーダンス時にゲート信号がLo固定になる様にします。

スイッチングの過渡時間が遅い
 →H⇨L(L⇨H)への遷移時間がμsオーダでもSOAを超えて破壊する場合があります。
  負荷抵抗が小さく大電流が流れるシステムの場合はその可能性が高まります。

繰り返し動作で放熱が間に合わず故障する。
 →SOAギリギリ問題無しでも、繰り返し動作(高周波動作)や、環境温度が高い理由で故障
  する場合があります。

動作中だけでなく、動作前、起動時、終了時、終了後、すべての状態において問題はないのか、検証する事が重要です。
この時、オシロやテスターは0Vとハイインピーダンスの区別がつかないので注意が必要です。
(どちらも0Vとして表示してしまう)


<まとめ>
 エネルギー破壊している場合、外部からのサージ印加が原因と処理される場合が多々あります。しかし、エネルギー破壊する原因は、過電流、過電圧だけではありません
電流・電圧は定格内にあって、外部サージを受けない状況でも、エネルギー破壊が起こる事を認識しておきたいです。
同様に、ノイズ(微弱エネルギー)がきっかけでエネルギー破壊を起こすラッチアップも認識しておきたい現象です。

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