コンデンサの本質(水流モデル)

はじめに 
 コンデンサの機能として、「蓄電」と「カップリング」があります。
(カップリングとは、直流をカットし変化分だけ伝達する事です)
イメージとして、「蓄電は電荷を貯める」、「カップリングは電荷を貫通させる」 と考えがちですが、それは相反するものです。 そうなってしまう理由は、水が水槽に溜まる状態をイメージするからです(水流モデル)。 しかし、当然ですが両者は本来全く同じ現象であり、何に着目しているかでイメージが変わっているだけに過ぎません。
 コンデンサは電流を貫通させながら、電荷を蓄積します。この現象をイメージするには単純な水流モデルではダメなのです。


水流モデルではなぜダメか
 コンデンサに電圧をかけると必ず貫通する電流が流れます。
電流はコンデンサの+端子から入って−端子から出ていきます。(+)から入ったのと同じ量の電流が(−)から抜けて行くわけです。 これはどんな時も同じです。
充電で使おうと、パスコンで使おうと変わりません。
これはキルヒホッフの電流則であり、入出力の量は必ず一致するわけです。

一方で、水流モデルで考えた場合、入った水はそのまま溜まり、どこへも漏れて行きません。 もし入ったのと同量の水が出て行ったら、水は一向にたまらない事になります。
これが、水流モデルでコンデンサを考えてはいけない理由です。


なぜコンデンサに電荷が溜まるのか(充電時に電流が抜けて行くのに)
 コンデンサの中に電流が溜まらないのに、なぜ電荷が蓄積されるのでしょうか。
正確にいれば電荷は溜まっていません。もともあった電荷をエネルギーの高い状態にさせた事で電荷が溜まった様に見えるだけです。位置エネルギーに似た概念です。
位置エネルギーは、物を高い位置に上げるだけですので、物の出入りは全くありません。



水流モデルで考える場合
 もしコンデンサを水流モデルで考えるとしたら、揚水発電で考えるといいです。
揚水発電とは、水力発電の一種ですが、発電というよりは蓄電が目的です。
発電に使う水は、再度上に揚げて位置エネルギーとして保存し循環させます。

これをコンデンサに当てはめてみると、揚水発電の水の循環系はコンデンサ本体で、水を上水槽に揚げる行為は充電になります。 充電の為に水を下水槽から上水槽にポンプで送りますが、そのポンプを動かすエネルギーを水力発電で得ると考えると、普通の水力発電ですので、水は上流から下流に流れるだけです。 つまり外部から入れた水はそのまま排水されて、どこにも溜めていませんが、内部の上水槽には水が溜まるわけです。
なぜ貫通する電流を意識しなければならないのか(水流モデルは不都合な理由)
 充電時の+端子に流れ込む電流と、放電時の+端子から出て行く電流だけ考えれば、−端子から流れ出る電流など考えなくてもいいのでは と思うかもしれません。
しかし、電源安定用の大容量コンデンサなどの場合、電源ONの瞬間にコンデンサに大電流が流れ込み、−端子から出てGND配線に流れ込む時に悪さをする恐れがあります。
GND配線が細かったり、長くてインダクタンスが高い状態であると、大電流のせいでコンデンサの−端子の電位が浮きます。
回路GNDとコンデンサ−端子の間に電位差が発生する事により、各々をGNDとしているIC間の通信などがうまくいかなくなる可能があります。

追記
コンデンサの全ては、充放電現象だけで説明できます。
電圧変動がある場合はコンデンサに充(放)電電流が流れる(導体としての振る舞いをする)
電圧変動が無い場合はコンデンサに電流が流れない(絶縁体としての振る舞いをする)
(充電が終了した状態)
この二つの性質を持つ物質が誘電体。

NOTEに書いた記事もよろしければ見てください。

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