電子回路のフィードバック制御(負帰還)の仕組み

<はじめに>
 昔、ある実験のためにトランジスタ(Tr)に定電流を流す回路がありました。その回路図を見てもTrのゲートに何Vが掛かっているのか読むことができず、どうしてこんな適当で単純な回路でフィードバック制御が成立するのだろうと不思議に感じました。
きちんと勉強しなかった事がばれて恥ずかしい限りですが、もし同じように疑問と感じた人はぜひ読んでください。

フィードバック制御とは、目標通りになっているか常に結果をモニターし、ズレていれば修正する制御を言います。例えば暖房制御などは、起動時はフル出力させ目標温度に近づくにつれて段階的に出力を弱め到達したら止める。このようなきめ細かい制御プログラムもありますが(段階的に弱めないとオーバーシュートするので、決してきめ細かいわけではないかもしれませんが)、電子回路だけの世界ではもっと単純なロジックだけで制御を実現させています。


<フィードバック制御の説明>
 例として、1Aの定電流回路を考えます。(下図1)
負帰還の知識が無い想定で考えてみますと、Trのゲート電圧を何Vくらいにすれば電流を1Aに絞ることができるのかを考えてしまいます。Trのgm(相互コンダクタンス)を勘案してゲート電圧を決めます。そして、その電圧を基本としつつ、電流(電圧に変換)をモニタしてズレた分の修正する制御をしたくなります。
                   (図1) 

考え方として、どうしてもゲート電圧を決めたくなります。確かに決めなければいけないのですが、負帰還回路のロジックを適用すればゲート電圧をある意味決めなくてもよくなります。

では、それについて詳しく説明します。
例として、オペアンプを使った負帰還回路(下図2)について説明します。
負帰還回路は、フィードバック部(オペアンプ出力から-端子までの帰還経路)に抵抗が入ろうとトランジスタが入ろうと、それによって何かを変更する事なく直結したのと同じに成立します。(この場合はゲート電圧と電流の関係が正理論である事が前提)。
そして、この負帰還により「仮想短絡」状態になります。
仮想短絡とはオペアンプの+端子と−端子が同電位になろうとする動きです。
これはオペアンプの内部にその様なロジックがあるわけでなく、オペアンプ(=コンパレータ)の出力を−端子にフィードバックさせるだけで自然とこのような動きになります。

オペアンプの+端子と-端子が同電位になるという事は、電流検出抵抗の電圧が、目標電圧値になる事を意味します(つまり1Aが流れている事になります)。この時オペアンプの出力はどうなっているのか分かりませんが、それを知る必要はありません。

仮想短絡の動作は、オペアンプの単純なロジックだけで成立しています。この場合は、
電流が目標値より小さければ上げる、大きければ下げる このロジックだけです。
目標値に到達したらその状態で静止させるという事はなく、Hiに向かうかLoに向かうかの動きしかありません。

目標値で静止させる事はないと書きましたが、実際は静止します。動いているのだけれども釣り合いが取れていて表面上は静止している状態と言えます(動的均衡)。 
                   (図2)


 この制御の利点は、Trの特性に関係なく成立する事です。温特による変化があっても、別のTrを付け替えても制御回路をいじる事なく同じ動きをします。

<注意点>
 本題から外れますが、電流制御という目的では、この回路はあまり望ましくありません。
Trのゲートで電流を絞る仕組みにすると、Trが電力消費しエネルギーが無駄になります。消費電力による自己発熱でTrが故障する可能性もあります(トランジスタのハーフオン故障を参照)。 この場合はPWM制御で行うのが良いです(但し、制御方式が複雑になってしまいますが)。

また、この制御は常に目標値を跨いでHi、Loを往復する制御となる為、言うなれば発振回路と同じです。 発振してるか否かは、発振の振幅によります。 振幅がほぼ0であれば問題ありませんか、影響を無視できない程の場合は対策が必要になります。
制御波形が振動(発振)しているのを見て、ノイズを疑う人がいますが、信号ラインが振動しているからと言って外部ノイズが原因とは限らず、フィードバック制御の不整合である可能性もあります。

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