高抵抗は注意して使う

 <はじめに>
電子回路にはいろんな用途で抵抗器が使われます。その抵抗値は大きすぎると不具合の原因になる場合があります。 勿論、それらの抵抗は適正な値になるよう計算して決めているわけですので、高抵抗だからと言って禁止するわけにはいきません。ですので、高抵抗を使用した場合は以下に書きます不都合が起るかもしれない事を念頭に入れて設計すべきと思います。


<高抵抗の使用に注意しなければならない理由>
「高抵抗素子」と「回路の絶縁箇所」の関係性が注意すべき理由です。
絶縁箇所は最低でも数十MΩ以上あります。そして回路で使用する抵抗素子は一般的には数十KΩとした場合は三桁の差があります。
しかし、数百kΩやMΩオーダーの抵抗になると回路の絶縁部の抵抗に近くなります。すると分圧により、電圧ドロップが発生します。
勿論、プリント基板の絶縁抵抗は数MΩよりずっと高い値ですから、通常ではそんな事は起こりません。

問題は、湿度や水分が付着した時です。その状態になると絶縁抵抗が格段に低くなります。
例えば下図のようにIC入力端子に100kΩを適用し、その端子の隣接にGNDがある場合、もし絶縁が100kΩまで落ちたら、本来5Vの信号が2.5Vにドロップします(下図)。

恐らく殆どのICの入力抵抗は100kΩなどという高抵抗を使う事はありませんが、タイマーICや発振回路の定数などに使用する場合があります。


<対策>
絶縁部に何の懸念もなければ対策の必要はありません。しかし絶縁部の距離が短い場合や、湿度の懸念がある部分であるならば、対策を織り込んでおかなければなりません。
距離を広げる、防湿コーティング剤などが一般的な方法です。


<故障時>
故障発生事に起こりがちな事ですが、入力電圧がドロップしているので、IC内部のリーク故障と勘違いしするケースがあります。 そしてICを外して単体を解析しても異常なしで非再現故障となります。 ですので、事前にこの事象を知っておく事は有益であると言えます。


<まとめ>
0Ωだけがショート故障ではありません。絶縁部であれば例え数百kΩ、場合によっては数MΩに低下しただけで故障につながる事があります。 そしてその故障モードを誘発する原因の一つは高抵抗の使用です。 しかし、高抵抗素子は必要性があって使う事もあるので、その場合は系の絶縁劣化を防止する対策(防湿、配線間隔)をしておく必要があります。

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