外的要因ではない電源ノイズ

 <はじめに>
 今回はあまり意識されていない(と思われる)電源ノイズに焦点を当てようと思います。
外的要因でないノイズと聞いて、自家中毒の事を連想されるかもしれません。これは、自分が出したノイズが同じ基板内の電子部品に干渉する事を表している言葉です。しかし今回の話はもっと狭い範囲の自家中毒で、被害者と加害者が完全同一のケースについてです。


<同時スイッチングノイズ>
 電源ラインにノイズが乗っていた場合、まず疑うのは電源(供給源)が発しているもの、あるいは電源ライン(配線)で拾ったノイズを考えます。 これらは微視的に見て外部要因と言えます。 

しかし、まさに自分自身が原因で電源にノイズが発生し、自身を誤作動させる事があります。
LSIなど消費電力の大きいロジックICは、億単位のトランジスタがON /OFFの切り替え(スイッチング)を繰り返しています。多数の出力が偶然同じタイミングでONする場面がある場合、瞬間的に大きな電流の変化が発生します。 それにより電源電圧が変動しノイズとなります。
このノイズを「同時スイッチングノイズ」と呼ぶ事があります。

これは、LSIの急激な変化に、電源供給の能力が追従できていないとも言えます。或いは、電源の能力が十分だとしても、電子基板上の電源−LSI間の配線抵抗が大きい場合もあります。
配線抵抗は0Ωでも、配線幅が細ければ大電流で電圧降下を起こします。また、配線幅が十分である場合でも配線が長くインダクタンスを持ってしまう場合は、同じく電流変化で電圧降下が発生します(V=L*di/dtの原理)。


<対策例>
 以上より、同時スイッチングノイズ対策としては下記があります。
・電源ラインを太く短くする
  →配線抵抗と寄生ンダクタンスを減らす
・パスコンを電源端子につける
  →電源端子に近い位置に付けないと効果が無い。僅かな距離の差で効果が違ってくる。
・出力にダンピング抵抗を入れる(無い場合)
  →出力電流が主原因の場合は、出力(次段階路の入力)にダンピング抵抗を入れて、電流
   の急激な変化を緩和させる
・電源容量を上げる
  →それでも改善しない場合は電源を能力の高いものに替えてみる。例えば1Aの電源よりも
   5A電源の方が、電流変化に対しての追従性が良くなる。


<まとめ>
 ノイズというと、「発する側」と「受ける側」があると考えがちで、それを基に対策を打ちたくなります。 しかし、「同時スイッチングノイズ」は被害を受けている自分自身が出しているノイズであり、原因として想定しにくいかもしれません。
ですので、この様なノイズがある事を知っておけば原因の特定に役に立つ場合があります。
(参考:電源ノイズが原因で発生する現象の例 ジッタの原因) 

コメント

このブログの人気の投稿

サージとインラッシュ電流(突入電流)の違い

オペアンプの基本原理

トランジスタのハーフオン(半オン)故障