H3ロケット打ち上げ失敗(第二段エンジン着火ぜず)原因調査の途中報告…誤検知について

現時点でJAXAが発表した故障原因は下記のようになっています。(資料より抜粋)

  PSC2が過電流を誤検知

  PSC2から電源供給している下流機器の正常動作範囲で消費電流が過大

  PSC2から電源供給している下流機器の短絡故障、またはワイヤハーネス等の地絡により過電
 流が発生


基本的には、過電流検知し電源遮断させたためにエンジン着火しなかった事が原因のようです。その過電流の原因が何なのかという可能性が上記3項目に書かれています。

この中で、上記一番目の過電流を誤検知したについて、ここには根本的な問題があると思います。この検知の結果、電源を遮断したわけですが、改めて一般的な過電流検知の目的とは何でしょうか?

①システムを保護する(破壊を防止する)
②安全を確保する(乗員保護や周辺の人への被害防止)
③リセットして正常動作に戻す

これをロケットに当てはめて考えてみます。
①について
打ち上げてしまったロケットに対し、異常が発生したからといって停止し保護する意味はありません。もう再使用はできないですから、破壊して火災になっても問題ありません。 むしろ自爆(指令破壊)させたわけですので。

②について
これも上と同じく、人が乗ってないし周辺に人もいないのでフェールセーフは必要ないです。

③について
これが今回の打ち上げで唯一意味のある機能です。
この機能があったのか分かりません。データ(ログ)を取る意味でつけるなら意味があります。

フェールセーフは信頼性を高める手法だと勘違いしますが、その逆です。
安全や機器の保護に対する信頼性は上がりますが、機器の故障という意味だけで言えば間違いなく下がります。一般の機器や乗り物は安全が優先されるので、故障率が上がってでもフェールセーフは考えなければなりませんが、ロケットに必要ないフェールセーフをつけてわざわざ故障率をあげる事もありません。

勿論、一回目の失敗のように、まだ打ち上げ前の状態でフェールセーフを効かせる事は意味があります。 そこて停止してくれれば破壊せずに済むのでロケットが無駄にならなりません。

しかし、打ち上げてしまった後に異常検知し停止させても、まったく意味はないです。
ましてや誤検知だとしたら、本当はうまくいっていたものをフェールセーフが台無しにしたわけです。


「冗長」と「フェールセーフ」を混同してはいけません。
機能が増える程信頼性は下がります。故障率と言った方がピンときますが、部品が多いほど故障の機会が増えるわけです。ですので本来機能にプラスしてフェールセーフを付加するという事は、故障率を増やしているようなものです。

ですので、打ち上げ後の機能にフェールセーフなどいらないです。冗長だけつければいいのです。今回のシステムはA,B二系統の冗長系になっていて、過電流を検知してBに切り替えたようですが、Bも過電流検知して失敗に至ったようです。
最終的に着火しなかった理由は書いてありませんでしたが、誤検知であっても、遮断さえしなければ着火してるはずなので、恐らくB系統も過電流検知で電源遮断していると思われます。


故障発生→フェールセーフ・・・安全面の信頼性は向上、しかし故障率は上がる
故障発生→放置・・・安全性は下がるが、故障率は改善される

過去に書きました下記ブログもよろしければ見てください。

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