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12月, 2022の投稿を表示しています

電流の本質

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電流の本質と言っても、自由電子などのミクロな話ではありませんのでご了承ください。 電流の大原則は 電圧の結果として、電流が流れる という事です。 電圧と電流を同等に感じている人もいるかも知れませんが、主従関係は必ず「 電圧>電流 」です。 電流源(定電流源)などは、電圧と関係なく電流を発生させるメカニズムなのだと勘違いしそうですが、そんな事はなく電圧で電流を発生させている装置です。 詳しくは、 電流源とは何か  を参照して下さい。 経路が閉じていなければ電流は流れない 。 当たり前の事かもしれませんが、重要な概念です。 経路は一周して同じ所に戻って来なければなりません。 下図のような、プラスから出てマイナスに戻って来るだけでは電流は流れません。 電池1のマイナスと電池2のプラスを繋げば電流が一周できるので、その時はじめて電流が流れます。 電源も含めて 閉じた回路でなければいけません。 電流の過渡現象 過渡現象を考えなければならないのは、 コンデンサ と コイル です。 電圧に変化が無い場合(過渡状態でない場合)は、 コンデンサは絶縁体、コイルは普通の導線 と同等の動きになります。 ・コンデンサの電流 流せる電流の総和量が決まっていて、容量分しか流せない。 コンデンサ(誘電体)の中は自由電子の移動で電流が流れているのではなく、誘電体の電極の並び方の変化で電子が移動したのと同等の動きをしている( 変位電流 )。 ・コイルの電流 基本は導体なので普通の導線と同じ様に電流は流れるが、磁界(の変化)を受けると電流に変化が出る。直線の導線では発した磁界はどこにも影響を与えないが、コイル形状により隣接する導線からの磁界の影響を受ける。 電流と磁気  電流は磁界を作る源にもなる(起磁力)。 磁力を発生させる事によって電気エネルギーを機械エネルギーに変換できる。 磁界を媒体にして空間でエネルギー伝達ができる(電流→磁界→電流) 電流とエネルギー  電流が流れていないとエネルギーが出せない(負荷は電流が流れていないと動作しない)。 電圧駆動素子(MOSFET)は?  ・・・電圧で駆動しているのではなく、電圧で 状態を保持している だけ。 駆動時はゲート容量への充電(放電)行為が必要なので電流が必要。 電流の速度  ここを参照して下さい( 電子の速さは遅いのに 電流は速い理由 )...

半導体の抵抗測定や導通チェックにテスターを使ってはいけない理由

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<はじめに>  テスター(マルチメーター)は便利な測定器ですが、半導体を測定する場合は注意が必要です。基本的に 抵抗値 の測定や 導通チェック にテスターを使用してはいけません。  回路を測定しようとすると多くの場合ICやダイオードが間に介在しますが、半導体はテスターで測定すると間違った結果を得てしまう事があります。 <使用してはいけない理由>   テスタの抵抗測定は、測定される物の特性がリニアの時に成立します 。 リニアとは2つのパラメータが比例関係で直線となる特性の事です。(下図 抵抗器) この特性の物は、どのポイントで測定しても同じ結果が得られます。すなわちテスターのように任意の1点で測定しても正しい値が出るのです。 ところが、 半導体の場合はV、Iの関係がリニアではありません 。(上図 半導体) ですので、測定ポイント(電圧)によって表示される抵抗値が異なってしまうのです。 抵抗・導通チェックはかなり低電圧で測定している場合がありますので、例えば①が測定ポイントのテスタであればオープンという結果になりますし、②が測定ポイントのテスタの場合はショートという結果が出てしまいます。 <理想の測定機器>  配線の導通チェックのレベルであればテスターでも十分ですが、半導体が含まれている場合は「カーブトレーサー」を使用します。 カーブトレーサーは上記の図のような表示ができるV-I特性を測定できる測定器です。 なお測定には回り込みはつきものです。自分が想定してる経路以外の経路が同時に意図せず測定されている場合があるので注意が必要です。 プローブ端子の2点間の経路について、測定目的以外の経路が存在していないか確認し余計な経路がある場合はそこを切断する処理が必要です。 目次に戻る

ハイインピーダンスと0Vの違い

 <はじめに>  ハイインピーダンスとはオープン(開放)状態の事を言いますが、オシロスコープやテスターで測定すると0Vを表示します。 しかし、 ハイインピーダンスと0Vは別物 です。 ハイインピーダンスは不定(何Vになってるか分からない)状態で、0Vはゼロと言う電位の状態 です。 <区別しないといけない理由>  では、この違いを認識しないとどんな事が起きるでしょうか?  ハイインピーダンスと0Vの違いを意識しなければならない状況(その1 ) 故障解析:ショートとオープンを見誤る テスタを当ててみたら0Vだったので、0V固定故障(GNDショート)と思ったらオープンだったなんて事があるかもしれません。前述の通りオシロやテスタはハイインピーダンスも0Vも、0V表示するからです。 ではハイインピーダンスと0Vはどうやって見分ければ良いのでしょう。 基本はV-I特性を見る事です。 電源オフにした状態でカーブトレーサのような測定器でみます。電圧をかけても電流が流れないのであればオープン故障。ある電位で電流が流れ始めたらオープンでは無い。 ハイインピーダンスと0Vを意識しなければならない状況(その2) CMOSの入力端子:ICの劣化を誘発する 無駄な電力消費の原因 入力の空き端子は必ずプルダウン(もしくはプルアップ)処理をする様注意書きがあります。 CMOSの入力端子の先はMOSFETのゲートになっていて、それは容量(コンデンサ)ですのでDC的にはオープン(ハイインピーダンス)です。 従って、使用していないからと言って何処にも繋がないと電位が不定になり、出力に何が出てくるか分かりません。 そもそも使ってない入力に対する出力なのだから何が出力されようと構わないと思われるでしょう。ですので実害は、CMOSのPch、Nchが中途半端にONする事による貫通電流が発生する事です。これがICの発熱劣化や消費電流の無駄になります。 <余談>  ハイインピーダンスと0Vの違いが分かる表現を考えてみました。 ・個数は何も無い状態を0個と表現するが、電圧は何も無い状態を0Vとは言わない。 ・ON/OFFスイッチで、Hi、Lo信号を作る事はできない  (ON=5V、OFF=0Vにはならない。OFF=ハイインピーダンス) ・電源を切った後の電流値は0Aだが、電圧値は0Vではない。   つまり、電...

誤検知という不具合(しきい値の考え方)

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<はじめに>  過電流検知、過温度検知、ガスセンサーなど検知機能には多くの種類があります。これらは正しく検知する事は勿論必要ですが、 同じくらい誤検知しない事 も重要です。 どちらの故障モードでも故障には違いなく、修理や交換をしなければならない事実には変わりありません。 誤検知品が市場に流出してしまう原因の一つに、 しきい値の考え方の不備がある と考えます。 <検査もれの原因>  ここで言う誤検知とは、製品不良が原因でしきい値が規定を外れた為に、検知しなくて良い正常レベルを異常判定してしまう事を指します。よくあるのは異常検知の検査は行なっていても誤検知に対する検査はしていないケースです。通常状態で誤検知していないから問題ない、つまり通常動作を観察する事が誤検知有無の検査になっているという事があります。 表裏一体の物は、状態が二つしか無いが故に、片方が確認できればもう片方は確認しなくとも分かるという先入観があります。  それと同じく、検知、不検知の2状態がある場合に、正しく異常検知する事が確認できれば、不検知側も正しく動作していると考えがちです。 検知の「しきい値」の考え方は、IC入力信号のHi、Loのしきい値と全く同じです。 HiもLoも重みは同じなので、Hiを認識したから安心してLoは省略してしまう事は無いと思います(これは冗談ですが)。 しきい値は簡単な概念ですが、意外に落とし穴があるパラメータであると感じます。 以下に、しきい値の確認方法について書きます。 <しきい値の正しい確認方法>  ICのHi、Loのしきい値を例にとって考えます。 一番分かりやすい検査方法は、しきい値がいくつなのかを測定する事です。 入力電圧をスキャンしていき、ロジックが反転したタイミングを検知して測定しますが、時間がかかるのと、規格内に入ってるか否かを知るだけの目的に対してはオーバスペックです。 ですので、恐らく一般的には定点測定をしてると思います。 ここで間違い易いのは前述の通り、1点で測定してしまう事です。 ある個体のしきい値の規格値が2.5Vの場合、Hiを確認するのに例えば2.51Vで検査したとします。これでHi認識された場合、HiはOKですがLoはどうでしょうか。この個体が不良品でしきい値が1Vになっていた場合でも、HiはOKになります。極論を言えばHiにしかならない故障品でも...

トランジスタのハーフオン(半オン)故障

<はじめに>   ハーフオン故障(半オン故障)とは、トランジスタを中途半端にON(あるいはOFF)させた状態が原因で発生する事象です。この故障モードは一般的に知られてはいますが、見落としがちな原因でもあります。 故障したICチップの焼損状態から、外部サージによる故障であると誤って報告されるケースが多いからです。  ハーフオン故障はサージ故障ではありません ので、いつまでたっても正しい原因に辿り着けない事になります。 <ハーフオン故障のメカニズム>  トランジスタ(MOS FET、バイポーラいずれも)は、ゲート(ベース)に中途半端な電圧をかけてONさせた場合、 消費電力が大きくなり破壊する 可能性があります。 フルON状態であればトランジスタのON抵抗が0に近く電圧降下が約0になる為、電力消費は僅かで済みます。またフルOFF状態であればON抵抗は大になり電流は約0なのでこれも電力消費は僅かで済みます。いずれもハーフオン故障は発生しません。しかし中途半端なON(OFF)は、電圧・電流両方ともかかるので電力消費が発生し故障を誘発する可能性があります。   こうなっていない事を確認する為にSOA(Safe Operating Area: 安全動作領域)内で動作させていることを検証して回路設計をします。 <発生してしまう原因>  トランジスタをスイッチとして使う場合(ほぼこの使い方だと思いますが)、SOAを意識する事は無いと思います。スイッチですのでON時、OFF時の2状態しかなく、前述の通り電力消費は殆ど無く故障しません。  しかし、ON/OFF状態しか設定していないつもりでも、下記のように 意図せずハーフONに なっている場合があります。 ・ OFF状態のゲート電位が0Vになっていない 。(ハイインピーダンス状態になっている)  →システムOFFの状態において、ロジック(ゲートに信号送る回路)の電源はOFFしているが   トランジスタ電源が切れていない場合、トランジスタのゲート電圧は不定になります。   不定(ハイインピーダンス)は0Vではなく電位が定まっていない状態なので、トランジス   タがハーフオンする可能性があります。 対策としてはゲートにプルダウン抵抗をつけ   て、ハイインピーダンス時にゲート信号がLo固定になる様にします。 ・ スイッチングの過渡時間...

コイルはOFF コンデンサはONの時に悪さをする

<はじめに>   コイル・コンデンサは過渡現象があり、その時の動作に注意が必要です。 コイルは過電圧、コンデンサは過電流を引き起こす可能性があり、その程度によっては回路の故障や誤作動の原因になります。 <コイルから発生する過電圧サージ>  通電が切れる瞬間に発生する 逆起電力 が由来のサージです。offサージと呼ぶ事もあります。 具体的には、リレー・ソレノイドアクチュエータ・モータ等の誘導性負荷が該当します。 サージにより、この負荷を駆動するトランジスタが破壊する事があります。 サージ電圧がトランジスタの耐圧を超えた場合に破壊しますので、サージレベルの把握が必要です。 しかしサージ電圧を正確に把握する事は難しく、マージンを持った対策が必要です。 正確な把握が難しい原因は、 スイッチング速度によってサージ電圧が変化する為です 。  V=L*(di/dt)ですので、スイッチング速度が速いほどサージ電圧は高くなります。 例えば、MOSFETのゲート抵抗を変化させるとスイッチング速度が変わり、サージ電圧も変化します。 また、OFF時に注意と書きましたが、ON時にも注意しなければならない場合があります。リレーの様な 機械的接点ではチャタリングが発生し、短時間ですがON /OFFを繰り返す からです。 このOFFの瞬間に逆起電力によるサージが起きます。 微視的に見ればOFF時のサージですが、 リレーの動作で見ればON動作であり盲点になります。  トランジスタと違い過電圧でリレーが直ちに故障する事はありませんが、この状態の繰り返しにより接点にカーボンが堆積し導通不良となる可能性があります。 コイルOFF時に高電圧が発生するメカニズムは、下記リンク内に記載しましたので参考にして下さい。 インダクタ(コイル)の本質 <コンデンサが起こす過電流>  通電する瞬間にコンデンサに流れ込む過電流が原因で、スイッチングしているトランジスタの破壊やリレー接点の溶着が発生します。 ON時に流れる突入電流を確認しておく必要があります。 また、盲点となり易いのがコンデンサから出ていく電流です。これはプラス端子から出ていく放電電流のことではありません。充電中にも電流はコンデンサの外へ流れ出しています。 コンデンサへ電流が流れ込んでいる瞬間、 同時に同量の電流がマイナス端子から出ていくの...

モーター始動時の突入電流の理由(コイルは起動電流を阻止するはずなのに)

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<はじめに> コイルは始動電流を阻止するはずなのに、なぜモータは突入電流が流れるのか? という疑問について書きたいと思います。 結論から言うと、まず突入電流にみえている電流はコイル単体の特性が出ているだけで、その後の電流が小さくなるから大きく見えているだけです。 この突入電流に見える電流は、本来その後もずっと流れ続けるはずのものですが、モータの回転につれて電流が減少する為に、始動時の電流だけが突出して見えるだけです。 モータ特性全体をコイルの特性と思って見てしまうから「なぜ始動電流は絞られてなく、逆に大きくなるのか?」と思ってしまうのです。  <説明> モータやコンデンサに電圧をかけると、初期に大電流が流れます。 これを突入電流とかインラッシュカレント(Inrush current)等と言います。 (モータの場合は、突入電流と言わないらしいですが、起動時に流れる電流の意味としてこう呼ぶことにします) 一般的にコンデンサは充電されるまで大電流が流れますが、コイルの場合は逆に始動の瞬間は電流が流れません。 ですのでコイルで構成されているモータに始動電流(突入電流)が流れる現象は直感的に理解し難いです。 これを理解するには、始動時(突入電流)とそれ以外の部分を別物として認識しなければなりません。  まず、始動時はモータが回転していないので、周囲の磁束の変化はなく、コイルは自己インダクタンスの影響しか受けません。即ち コイル単体だけの特性が現れる 事になります。(図中①部分) モータが回転を始めると磁束の変化が発生するので、 リアクタンス(抵抗)が発生し電流が絞られます。 (図中②部分) 即ち、 始動部はコイル単体の特性、それ以降はモータの特性  と言えます。 以下余談ですが、 始動電流を突入電流と呼ぶと理解を妨げる原因になるかもしれません。確かにモータ特性としてだけ考えれば、始動時に定常より大電流が流れるので間違ってはいませんが、コイル特性のみを考えた場合は、始動電流は突入でも何でもないわけですので。 また、モータロック時の電流が大きくなるのも全く同じ原理です。 ロック時は周囲の磁束変化が無いので、リアクタンスの影響が無くなりコイル単体の抵抗のみで電流値が決まります。 目次に戻る

ラッチアップの概要

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<はじめに>  ICを搭載している電子機器であれば、避けて通れないのがラッチアップです。ラッチアップが発生するのはCMOS構造のICですが、現在のICはほぼCMOSですので発生する事を覚悟しなければなりません。ICのデータシートに記載されている電気ストレス 試験 は「ラッチアップ 耐量」 と「ESD(静電気)耐量」だけです。それほどICの耐サージ性として重要な項目です。 <ラッチアップが発生すると何が起きる?> ・ICが破壊する→ラッチアップにより電源ライン(VDD-VSS間)に過電流が流れ、ICが破壊す         る事があります。 ・ICが誤作動する→上記過電流で故障に至らなくても、誤作動を起こす可能性があります。 <発生メカニズム> ラッチアップの基本的な発生メカニズムについて説明します。詳細図での説明は他に調べれば沢山出てきますのでここでは省略し、概念として理解の助けになると思われる内容に絞りたいと思います。 原理を端的に言えば、CMOSに勝手にできてしまう回路がONしてしまう現象です。この意図せず勝手にできてしまう物を寄生◯◯と呼びます。 P- MOSにはPNP、 N- MOSにはNPNの寄生バイポーラトランジスタができます。このP NP と NP Nは赤字部分で接続されているのでPNPNのサイリスタ構造になります。サイリスタですので、一旦ONするとトリガを除いてもONし続ける事になります。 サイリスタの動作として、PNP、NPNどちらか一方がONすると他方をONするよう動作します。それは逆方向にも当てはまるので、お互いにONさせ合う状態となり永久にON状態が維持します。 そしてこれは電流経路VDD–VSSのショート状態が維持される事を意味します。 しかし通常は寄生トランジスタが作動しない様なバイアスがかかっています。つまり、NPNの PをGNDに、PNPのNをVDDの電位になるような構造になっています。 では、具体的に寄生トランジスタのペアが作動してラッチアップが発生・維持される状況を説明します。 図は寄生トランジスタ(Tr)のみを抜き出した回路です。 1、ラッチアップしていない通常状態の寄生Trの状態    上側、下側Tr共にB(ベース)がOFF状態になっている 2、出力端子にマイナスノイズが印加された場合    ①上側TrのBがLoになる...

電子機器の発火原因 (通常電流でも発火してしまう原因)

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<はじめに>  火災原因として思い浮かぶのは、火を使った器具だと思います。しかし、電子機器からの発火は意外と多いです。最近ではLiバッテリーの発火事例が目立ちますが、今回は電子回路や配線での発火についての話です。 電子機器の火災といえばショートしかないと思い込んでいる人が多く、普通の電流でも火災になる話を理解してくれない人がいます。 過電流の形跡が無いのに発生した火災の場合は、この話を参考にして考えていただければと思います。 今回取り上げる内容の前提として、電熱器の発火は考えません。 元々高温になる部品ですから、通常電流でも過昇防止機能の故障等によって発火するのは当然ですので、それは除外します。  <メカニズム> 本来抵抗を持たない箇所が、何らかの原因で抵抗を持ってしまい、そこが加熱し発火するのが 原因です。 今回のポイントは 過電流でないのに発火 すると言う事で、 それを理解するには、発火するのに ちょうど良い抵抗値がある 事実の認識が必要です。 抵抗は小さいほど大電流が流れるので最大電力に近づくと思いがちですが、そうではありません(ショート故障の場合はその通りです)。 最大電力を得る抵抗値は、小さすぎても大きすぎてもダメで、その間にピークが存在します。 その様子を図で示します。 電力はV×Iですが、VとIはトレードオフになる為に中間に電力ピークが存在します。 では、このピーク値はどう導き出すのでしょうか。 「消費電力最大になる負荷抵抗」という項目がどの教科書にも載っていて、電源の内部抵抗値(r)と負荷抵抗(R)同じ時が最大値となります。 (最大電力になる負荷:r=R) このグラフでは内部抵抗r=1Ωの電源でシミュレーションしたのでピーク電力も負荷抵抗R=1Ωのところになっています。 <発生シチュエーション> 発生する状況としては、コネクタの接触不良、配線折れ(一部断線による抵抗増)、巻線のレアショート、回路基板上のショート等が考えられます。(この場合ショートの意味は、抵抗0で接触している事ではなく、ちょうど良い抵抗で接触している事を指します) 本来0Ωの箇所に抵抗が発生する、或いは逆に本来抵抗∞の箇所の絶縁が悪化する、の2通りが考えられます。 絶縁部の抵抗が下がるのは安全性に問題ありそうだと感覚的に分かりますが、抵抗0Ωの箇所が増加する状況においては、抵...

ジッタの原因(一要因)

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ジッタの解析方法について書かれてる物は多くありますが、発生原因について触れているものが少ないので書きたいと思います。飽くまで、数ある原因の一つだけについて簡単に書くものです。 ジッター(jitter)とは、信号波形の 揺らぎ の事を言います。 それは、クロックパルス幅や、周期の変動に現れたりします。 また厳密に正しい表現か分かりませんが、ノイズとジッタのイメージの違いを雑に言うと、こうなります。 ノイズは髭状(極短パルス)に現れ、電位も信号電圧より高かったり低かったりするイメージで、ジッタは信号パルス幅が広がったり縮んだりするイメージです。 このジッタが発生する一要因は ノイズです。ノイズがジッタを発生させるメカニズムはどんなものでしょうか。 髭状ではないノイズ(ジッタ)はどうやって発生するのでしょうか? 一原因は 電源ライン(VDD)の変動 です 。 電源電圧の変動なら、信号電圧レベルが上下するだけで、時間方向の揺らぎにはならないのでは? と思うかも知れません。 電圧がパルス幅(周波数)に関係する機構としてVCO(Voltage Controlled Oscillator)電圧制御発信器があります。電源電圧が振れる事によって、その瞬間に発生周波数が変化すればパルス幅の変動が発生しジッタとして観測されます。 電源ノイズの一要因は、スイッチングレギュレータ(電源IC)が発してるものや、ジッタが発生しているIC自身の電流変化(消費電流)がもたらしているものが考えられます。 自身が発生させているノイズは、瞬時の電流変化でも電源電圧が変化しないよう、電源ラインに余裕を持たせる事が重要です。 また、単に電源ICの供給能力が低くて変化に追従できないだけでなく、電源IC−IC(VDD)間の配線インダクタがIC電源変動を電源IC側に吸収させるのを妨げている可能性があります。 いずれも電源(VDD)近傍へのパスコンの最適化(容量、周波数特性)が効果的である事に間違いは無いと思います。 またVDD端子−パスコン間の距離も重要で、最短にしないと効果を発揮しない場合が多いです。 目次に戻る

サッカーVAR(ビデオ判定) mm単位精度への疑問

 ワールドカップサッカー、対スペイン戦で、三笘選手がクロスを出す瞬間にラインを割っていたか否かが話題となりました。 結果VAR判定により紙一重でIN判定となりましたが、色んな記事で1mmと言う表現が使われており、中には1mm以下の測定精度があると言う記事もあって、やや違和感を感じました。 まず、 映像(動画)は静止画をつなぎ合わせた物 に過ぎませんので、静止画を毎秒何枚撮れたかで測定精度が決まります。1秒間に撮れる画数が多いほど切れ目のない映像になりますので、精度が高い測定ができます。 それを踏まえて仮に計算をしてみたいと思います。 カメラのスペックや、その他データを正確に知る事ができませんので、飽くまで全て仮定になってしまいますが、 ・パス(球)の速度:8.4m/s(Football LABのパススピードランキングの日本チーム平均値より) ・ハイスピードカメラ性能:1000fps(1000コマ/秒) パスはゴールラインに対して約30°の軌跡でしたので、ゴールラインに垂直方向に換算した速度は(sin30°=0.5)で8.4m/sの半分の4.2m/sになります。 これから1コマ当たりの精度(コマとコマの間でどのくらいボールが進んでしまうか)を求めると。   4.2m/1000= 4.2mm となります 。 4.2mmごとの映像しか撮れない事になりますので、1mmの精度は出せません。 ボールが一回外に出てもその瞬間はコマとコマの間になっていて捉えれられていない可能性があります。 ボール内蔵チップ(センサ)を利用し、蹴った瞬間のタイミングで映像を止める機能があっても、前述の通りコマとコマの間は撮れてないので、そこで見れる画像は蹴った瞬間に 一番近いコマ にすぎません。それは完全に蹴ったタイミングと一致する場合もあるかも知れませんが、最悪0.5コマ分ずれる可能性もあります。  完全一致させる為には、蹴った瞬間に撮影する仕組みにすれば良いですが、いくら通信は瞬時(光速)であっても、ボール内センサが情報送信するまでのデジタル処理、そして受信側も同じくデジタル処理をしますので、ある程度のタイムラグが発生します。 静止物を1mm以下の単位で測るならまだしも、動体を、しかも通信による遠隔トリガでの測定でその精度が出せるのか私的には疑問があります。 つまり、切り取った...