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1月, 2023の投稿を表示しています

誘導負荷サージ(逆起電力)の発生メカニズム

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<はじめに>   誘導負荷サージとはコイルを持つ誘導負荷の通電を遮断した瞬間に発生するものですが、この現象を言い表す一般的な呼び方は存在していないようです。 と言うのも、このサージの正体はコイルの逆起電力(電圧)そのものですので、呼び方は逆起電圧と呼ぶのが正しいのかもしれません。 しかし、逆起電圧は必ずしもサージだけを指す言葉ではありませんので、誘導負荷サージとか、コイルサージ、オフサージ等と呼ぶ事もあるようです。 現実的には、リレーやソレノイドバルブなどのコイルを使った部品のオフ時に発生し、そのサージによって駆動トランジスタ等を破壊してしまいます。 <発生メカニズム>  このサージの正体は前述の通り コイルの逆起電力(電圧) そのもの です。逆起電力は電流変化があれば常に発生しますが、その変化がMAXとなる条件の一つである電流遮断の時に、サージとして現れます。 なお、コイル単体で見た場合の逆起電力の発生メカニズムはここでは省略します。回路の一部としてコイルを見た場合の逆起電力の発生の仕方について書きます。 逆起電力の基本概念は、 電流の 変化を抑える ような電圧がコイルに発生 する事です。それは慣性の法則と同じで、 変化の瞬間は 停止しているものは停止状態を保とうとし、移動しているものはその速度を保とうとする力です。(飽くまで変化の 瞬間 の話です。その瞬間が終われば最初の状態を維持しようとする力は働きません。変化後の状態が次の変化の初期状態となります) 電流変化は、電源で作り出される事もあるかもしれませんが、実使用上では負荷の急変や、スイッチのオン/オフが殆どです。 1、負荷急変時 電流5Aが流れている状態で、負荷が2Ωから10Ωに急変する場合を考えます。 電源10Vに対し抵抗2Ωですので、定常状態では5Aが流れます。(左図) 抵抗が10Ωに急変すると、5Aを維持する為にコイルは10Ωの上流を50Vに上げます。(中図) (50V/10Ω=5A)   この50Vが逆起電圧です。電源10Vなのでコイルとしては40Vの電圧を発生させた事になります。 図に-40Vとマイナスを付けているのは、電位差はコイルの電源側端子からGND側端子を引いた値ですので10V-50V=-40Vとなります。 最後にこの変化が終わった後は、コイルの起電力も無くなり、抵抗が上昇した分電流...

抵抗とダイオードの電圧降下の違い

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<はじめに>   「電圧降下」とは電流を流した時に抵抗等の両端に電位差が生じる現象の事ですが、電圧降下は抵抗だけでなくダイオードにも発生します。 しかし 抵抗とダイオードでは電圧降下の性質がかなり違います 。 この差を明確に認識しておくと、回路の理解に役立ちます。 <2つの違い> 抵抗とダイオードの電圧降下の差、1番目は 、 抵抗: 降 下電圧は 変化する (図1) ダイオード: 降下電圧は 一定(不変 ) (図2) と言うことです。 抵抗の電圧降下はオームの法則(V=RI)で表され、抵抗値や電流値によって変化します。   それに対し、ダイオードの降下電圧は 電流値に関係なく決まった値です 。 ダイオードの種類によって降下電圧(Vf)は決まっており、一般的にはシリコンダイオードの場合は0.7Vくらいで一定です。 抵抗とダイオードの電圧降下の差、2番目は、 抵抗:受けた電圧を全部使う ダイオード:決められた分しか使わない(余った分は誰かが使わないとショートする) です。 抵抗では、加わった電圧=降下電圧 と言えます。 印加電圧3Vなら、抵抗の降下電圧は3V、それに対しダイオードは0.7Vなので2.3Vが 余りま す 。 (図3)  電圧を上げてもダイオード電圧は0.7Vと不変ですが、抵抗は余った分を全部受けます。 (図4) 余った分を消費する素子が存在しない場合は、その分はショートとなり過電流が流れます。 ダイオードには 抵抗成分がない ので、ダイオードで使いきれなかった電圧分は、その電圧を使う素子が存在しなければショートになるのです。(この場合はダイオードが破壊します) (図5) <図3> <図4>                     <図5> <ダイオードはスイッチに似ている>  今回の趣旨に外れますが、 ダイオードは電流を通すか通さないかの二状態 しか存在しく、抵抗は存在しません。すなわち オープンかショート状態しか作らないと言う事です。 その意味からすればダイオードのロジックはスイッチに似ています。 負荷を繋がずスイッチのみを電源を繋いだらONした場合に過電流が流れるのと同じで、ダイオードだけを電源に繋ぐとONした場合に過電流が流れるのです。( LEDは不完全な負荷 も見てください) 目次に戻る

活線挿抜による故障

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 <はじめに>   活線挿抜とは、 電源 を切らないまま コネクタ など を抜き差しする事です。よく家電製品で「電源を切ってからコンセントを抜いてください」のような注意書きがありますが、それとよく似ています。家電品が活線挿抜してはいけない理由は書いてないのでよくわかりませんが、開発や製造現場におけるコネクタの 活線挿抜は、 回路の故障原因 となります。 その場で故障してくれれば原因推定もやり易いですが、劣化だけで時差で故障に至った場合等は何がきっかけで故障したのか分からなくなります。 そして破壊痕からサージが原因と特定されますが、サージはどこかで異常電圧が発生しているという思い込みで調査することが多く、原因にたどり着けない場合があります。 活線挿抜による故障は、データ破壊などもありますが、ここではハード的な故障について書きたいと思います。 < 故障 のメカニズム>  活線挿抜で故障する 仕組みを知 るには、 回り込みの概念を理解する必要があります。 まず活線挿抜で起 きる現象の起点は、 各端子が同時に接触しない、つまり瞬時かもしれませんが時間差で接触する事です 。これは例えば、+電源が接続された時まだGNDが接続されてない状態ができる様な状態を意味します。 説明の為に一例を示します 下図の回路において、電源+、GND、入力 の3端子に注目します。 電解コンデンサは電源安定のバックアップ用、ツェナーダイオードはサージクランプです。 これが例えば検査機にコネクタで接続されているとします。この3端子が時間差で接続する瞬間の状態をスイッチで示しています。 電源+と入力端子が先に接続され、GNDはまだ接続されていない状態です。 入力はLo信号(=GND)が入っています。 この瞬間に何が起きるか考えますと、赤線の経路を電流がたどります。 GND端子がまだ接続されていないので、回路中のGNDラインに入った電流はGND端子へは向かわず、ツェナーダイオードを経由して入力端子から出て行きます。 この経路には抵抗が無く、電流を絞るものが無いため過電流によりツェナーダイオードが破壊される可能性があります。電流を絞るものが無いと言いましたが電解コンデンサはどうなのか? という疑問を持つ方もいるかもしれません。コンデンサにはコネクタを刺した瞬間に、I=C*(dv/dt)の電流が流れます...

チップLEDは不完全な負荷

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 <はじめに>  題名に「チップLED」と表現した意図は、LED照明のような内部に制御回路が入っている製品と区別したいからです。 素のLEDと言う意味です。この素子の使い方について、当たり前の 内容ではありますが、ダイオードの概念を理解する助けになればと思います。 <LEDが不完全負荷の理由>  チップLED(以下LEDと書きます)は、不完全な負荷と言えます。 一般的に、負荷は単体で電源に繋いで機能するものと言う概念がありますが、LEDは単体で電源に繋いだ場合、過電流破壊するか、点灯しないかです。(実際はVf付近の電圧で駆動できたり、電源の電流容量が小さければ壊さずに点灯させる事もできますが、今回は十分な電流容量の電源5Vを印加した場合を想定します) LEDは、通常は 抵抗を繋ぐか、定電流源で 使います。それは前述の通り過電流で破壊してしまうからです。 つまり 負荷でありながら抵抗成分か存在しない のです(勿論0ではありません)。 電力消費するのに抵抗成分が存在しない、これはダイオード全般に言える事です。電流を絞らないのでVf電圧を超えた瞬間の過電流で壊れる危険性があるのです。   回路動作と抵抗の関係には、無意識の内に下記のようなイメージを持ってしまいます。 (これはオームの法則が根底にあるからと想像します) 「 電圧降下の発生は抵抗の存在を意味する 」、「 エネルギー消費する物は抵抗成分を持つ 」 しかし、LED(ダイオード全般)には、この概念は当てはまりません。 <ダイオードのV-I特性>   下図(図1)のように、Vfを超えた瞬間にほぼ垂直に電流が立ち上がります。 もし目標電流にするために電圧で制御しようとすれば、Vf付近の狭い範囲で調整しなければいけません。 少し電圧を動かしただけで電流値は大きく変動します。しかも、個体毎に特性は微妙に異なるので、実質電圧制御は不可能という事になります。 ですので、抵抗を入れて(図2)電圧に対する電流変動を緩慢にさせて電圧制御できるようにします。                                      ...

電圧原/電流源の内部抵抗の説明に何の意味があるのでしょうか

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<はじめに>  電圧源(定電圧源)、電流源(定電流源)の説明に、内部抵抗を重視する方たちがおられます。教科書にも書いてあるので、ある意味仕方ないとは思います。 しかし、内部抵抗がポイントである みたいな説明はちょっと違うのではと思います。 <誰に向けた説明なのか>  色々な電気関係の資料を見て思うのは、ほぼ学術的な視点で書いてあると言う事です。  恐らく電気学会の様な所で作成したバイブル的な物を基本に、教科書、参考書ができている事が原因だと想像します。 どの本(或いは規格)がバイブルなのかは知りませんが、理想電源を言葉と同時に回路で表していて、そこに内部抵抗の説明があると想像します。 彼らは恐らく、誰かに親切に教えようと思って書いたのではなく、普遍的な説明になるよう書き記しただけに違いありません。それを教科書で説明してるのですから、それは電圧源/電流源とは何かを説明しているのではなく、電圧源/電流源は権威者によってこう説明されています  と言ってるに過ぎません。これはもはや定義のような扱いになってしまい、定義に基づいて説かなければ正い説明とは言えない感すらあります。 しかし、この理解しずらいものをあえて説明の中心にする意味があるのでしょうか? 定義なら仕方ありませんが、これは説明であって定義ではありません。 この説明を真に受けた人が電流源の設計を任された時に、「さて並列に無限大の抵抗入れなくてはいけないな。なんせそこがポイントなんだからな。」なんて笑い話になりそうです。 <内部抵抗の説明に意味がない理由>    電圧源だろうが電流源だろうが、更に言えば、負荷であろうが、直列抵抗は0で、並列抵抗は無限大が理想に決まってます。 念の為に内部抵抗の説明で何を言っているのか簡単に書きますと、 電 圧 源 は、負荷(抵抗)が変動しても 出力電 圧 が変動せず、 設定した 電圧を維持 できる電源。 電 流 源 は、負荷(抵抗)が変動しても 出力電 流 が変動せず、 設定した 電流を維持 できる電源。 これを 無理やり回路で表現 すると  電圧源:内部抵抗0→内部抵抗と負荷との分圧が出力電圧になるので、負荷抵抗が変動して       も分圧電圧が変動しないほどの低抵抗にすべし(理想は0Ω)。  電流源:内部抵抗∞→出力電流を内部抵抗と負荷抵抗で分け合う構造になるので、分流比で  ...

外的要因ではない電源ノイズ

 <はじめに>  今回はあまり意識されていない(と思われる)電源ノイズに焦点を当てようと思います。 外的要因でないノイズと聞いて、自家中毒の事を連想されるかもしれません。これは、自分が出したノイズが同じ基板内の電子部品に干渉する事を表している言葉です。しかし今回の話はもっと狭い範囲の自家中毒で、被害者と加害者が完全同一のケースについてです。 <同時スイッチングノイズ>  電源ラインにノイズが乗っていた場合、まず疑うのは電源(供給源)が発しているもの、あるいは電源ライン(配線)で拾ったノイズを考えます。 これらは微視的に見て外部要因と言えます。  しかし、まさに自分自身が原因で電源にノイズが発生し、自身を誤作動させる事があります。 LSIなど消費電力の大きいロジックICは、億単位のトランジスタがON /OFFの切り替え(スイッチング)を繰り返しています。多数の出力が偶然同じタイミングでONする場面がある場合、瞬間的に大きな 電流の変化 が発生します。 それにより電源電圧が変動しノイズとなります。 このノイズを「同時スイッチングノイズ」と呼ぶ事があります。 これは、LSIの急激な変化に、電源供給の能力が追従できていないとも言えます。或いは、電源の能力が十分だとしても、電子基板上の電源−LSI間の配線抵抗が大きい場合もあります。 配線抵抗は0Ωでも、配線幅が細ければ大電流で電圧降下を起こします。また、配線幅が十分である場合でも配線が長くインダクタンスを持ってしまう場合は、同じく電流変化で電圧降下が発生します(V=L*di/dtの原理)。 <対策例>  以上より、同時スイッチングノイズ対策としては下記があります。 ・電源ラインを太く短くする   →配線抵抗と寄生ンダクタンスを減らす ・パスコンを電源端子につける   →電源端子に近い位置に付けないと効果が無い。僅かな距離の差で効果が違ってくる。 ・出力にダンピング抵抗を入れる(無い場合)   →出力電流が主原因の場合は、出力(次段階路の入力)にダンピング抵抗を入れて、電流    の急激な変化を緩和させる ・電源容量を上げる   →それでも改善しない場合は電源を能力の高いものに替えてみる。例えば1Aの電源よりも    5A電源の方が、電流変化に対しての追従性が良くなる。 <まとめ>  ノイズというと、「発する側」と「受...

GaN SiCが注目される理由(高効率パワーデバイス)

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<はじめに>  インバータ等に使うGaN、SiC等のパワーデバイス(パワートランジスタ)の進化がなぜ重要なのかを書きたいと思います。 ON /OFFだけのスイッチング素子なのに、なぜ効率化(省電力化)がそんなに重要なのか 。なお、GaN、SiCの特性等は書いてありません。また内容的には常識的な事ばかりですのでご了承下さい。 <制御手段の進化で効率化>  まずデバイスによる効率化の前に、制御方式による効率化の話をします。 駆動制御には大きく二つあります(ありました?)。「リニア方式」と「PWM」方式です。 PWMはインバータ制御とほぼイコールです。 リニア方式はもう殆ど使われていないかもしれませんが、両者の比較をする事は理解を深める事に繋がりますので簡単に説明します。 下図の左側がリニア方式です。リニア方式はトランジスタ(Tr)のゲート電圧(ベース電流)を制御する事により、 Trを可変抵抗のように機能 させる事で制御します。  一方PWM(Pulse Width Modulation)方式(下図右側)はゲート電圧(ベース電流)のパルスのデューティー比を変化させて制御します。パルスはTrのフルON /フルOFFどちらかの状態ですで、Trが中途半端な抵抗を持つ事なく制御されます。 ON/OFF信号で制御されていると言っても、モーターの動作がON /OFFすることはありません。モーターが追従できない速さでON /OFFさせているので、モーター回転速度の変化となって現れます。  基本的にTrのON及びOFF状態は電力を殆ど消費しません。ですのでPWM制御はTrが無駄な電力を消費する事のない効率的な制御手段と言えます。それに対しリニア方式はTrが無駄な電力消費をしてしまい非効率的と言えます。 場合によっては発熱で故障する可能性がある為、定格の検証を行なって適用します。 ( トランジスタのハーフオン故障 を参照) この様にPWM方式は効率的な制御方法ですが、スイッチングを高速で繰り返すことで僅かな 消費電力(スイッチングロス)も積み重なり無視できない量になります。 大電力を扱う装置は発熱し、EV(電気自動車)のインバータ等は水冷で熱対策するほどになります。また冷却の規模によっては装置が大型化してしまいます。(EVの場合はIGBTのテール電流が電力ロスの一要因にもなっていますが)。...

電子回路のフィードバック制御(負帰還)の仕組み

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<はじめに>  昔、ある実験のためにトランジスタ(Tr)に定電流を流す回路がありました。その回路図を見てもTrのゲートに何Vが掛かっているのか読むことができず、どうしてこんな適当で単純な回路でフィードバック制御が成立するのだろうと不思議に感じました。 きちんと勉強しなかった事がばれて恥ずかしい限りですが、もし同じように疑問と感じた人はぜひ読んでください。 フィードバック制御とは、目標通りになっているか常に結果をモニターし、ズレていれば修正する制御を言います。例えば暖房制御などは、起動時はフル出力させ目標温度に近づくにつれて段階的に出力を弱め到達したら止める。このようなきめ細かい制御プログラムもありますが(段階的に弱めないとオーバーシュートするので、決してきめ細かいわけではないかもしれませんが)、電子回路だけの世界では もっと単純なロジックだけで制御を実現させています。 <フィードバック制御の説明>  例として、1Aの定電流回路を考えます。(下図1) 負帰還の知識が無い想定で考えてみますと、Trのゲート電圧を何Vくらいにすれば電流を1Aに絞ることができるのかを考えてしまいます。Trのgm(相互コンダクタンス)を勘案してゲート電圧を決めます。そして、その電圧を基 本とし つつ、電流(電圧に変換)をモニタしてズレた分の修正する制御をしたくなります。                    (図1)  考え方として、どうしてもゲート電圧を決めたくなります。確かに決めなければいけないのですが、負 帰還回路のロジックを適用すればゲート電圧をある意味決めなくてもよくなります。 では、それについて詳しく説明します。 例として、オペア ンプを使った負帰還回路(下図2)について説明します。 負帰還回路は、フィードバック部(オペアンプ出力から-端子までの帰還経路)に抵抗が入ろうとトランジスタが入ろうと、それによって何かを変更する事なく直結したのと同じに成立します。(この場合はゲート電圧と電流の関係が正理論である事が前提)。 そして、この負帰還により「仮想短絡」状態になります。 仮想短絡とはオペアンプの+端子と−端子が同電位になろうとする動きです。 これはオペアンプの内部にその様なロジックがあるわけでなく、オペアンプ(=コンパレータ)の出力を−端子にフィードバックさせるだけで自然とこのような...

サージとインラッシュ電流(突入電流)の違い

<はじめに>   そもそもこの二つは全然違うと言われると身も蓋もありませんが、両者は同じだと感じる方に向けて書きます。「サージ」も「突入電流」も急激な電気的変化の現象で、装置の故障に繋がる恐れがあるものです。サージ電圧が発生すればそれに伴い急激に電流が流れる事がありますが、それを突入電流とは呼びません。この言葉が何を表しているかを知れば故障の事前防止になるかもしれません。 <サージと突入電流の違い>  定義は無いと思いますが、一般的にはこんな感じだと思います。 ・サージ:電圧の急激な変化によって発生する高電圧の事。これによって発生する電流をサー      ジ電流と呼ぶかもしれません(突入電流とは呼びません)。コイルの逆起電力や静      電気放電などがあります。 ・突入電流:主に始動時(ON時)の瞬間に流れる電流を指す事が多いです。始動時の負荷抵抗       が低い為に発生します。高電圧が原因ではなく、低負荷が原因で発生するイメー       ジです。 <発生原因> ・サージ:コイル(リレー、ソレノイド)のオフサージ(コイルの逆逆起電力)。      静電気、雷(帯電した絶縁物からの放電)なども。 ・突入電流:コンデンサ、モーター、フィラメント等      コンデンサは充電されるまでの電流。モーターは起動時に回転する前の磁束変化      がなく電流阻止されない状態の電流。(なお、モーターはコイルで構成されている      のにも関わらず起動時に大電流が流れる理由は こちら を参照してください) <留意すべき故障> ・サージ:コイル(インダクタ)負荷を駆動するトランジスタの故障(D-S間の過電圧破壊)      或いはリレーやスイッチの接点劣化(アーク(接点火花)によるもの)。      MOS FETのゲートやCMOSの入力端子の静電気故障       ・突入電流:容量(コンデンサ)或いはモーターの電流経路上にあるトランジスタや電源ICの       故障(過電流)、或いはリレーやスイッチの接点劣化(溶着) イメージとしては、サージはコイルが関係する部品、突入電流は容量(コンデンサ)が関係する部品が原因となる可能性が高いと言えます。(詳細は コイルはOFF時コンデンサはON時に注意 を見てください) <発生防止に必要なこと>  これらの影響を確認するに...

オペアンプの基本原理

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 <はじめに>  オペアンプの基本原理は非常に単純です。しかしオペアンプについて記述されているものの中には誤解を招く内容があり、それが理解を妨げている場合があるように思います。 その一つが、増幅がオペアンプICの内部で行われているようなイメージのものです。 増幅はオペアンプICの外で行われています。それを意識しながら増幅の原理を少しでも分かりやすく、簡単に説明したいと思います。 なお、以下、オペアンプIC単体を「オペアンプIC」、外付け抵抗を含めた回路全体を「オペアンプ回路」と記述します。 <理解するために必要な考え方>  無意識に考えてしまう思い込みが誤解の原因となりますので、まずありがちな思い込みを払拭する事が必要です。 個人的な推測ですが、ありがちな思い込みとして下記があます。 ①オペアンプICに入れた2つの入力信号の差を、外付け抵抗で決めた増幅率で増幅する。(×) ②オペアンプICの増幅率は無限大だが、外付け抵抗を付ける事により、その増幅率を調整する  ことができる。(×) これらは間違いです。 外付け抵抗で増幅率を調整している(決めている)の所だけを切り取ると間違ってはいませんが、その前に書かれている内容と組み合わせると間違いになります。 ①②はいずれも、オペアンプICの中で増幅している、という考え方です。 しかし、 オペアンプIC内で増幅を調整する事はしていません 。また重複しますが、外付け抵抗はオペアンプ ICの増幅率 を調整しているわけではありません。 ではオペアンプICの増幅率(Av)とは何なのでしょうか? これは後述します。 ここで必要な考えは、 「オペアンプIC」と「オペアンプ回路(システム)」の 動作を切り分けて考える という事です。 下図は、今説明した内容を図で表現したものです。 一番上の図:オペアンプIC単体の特性を表しています。増幅率は無限大ですので出力は振り切       れています。(オペアンプ回路構成にすると振り切らす中間値を出力する) 中間の図: オペアンプ単体が設定された増幅率で増幅を行っている。(×)        これは間違いです 一番下の図:外付け抵抗を構成する事で、分圧回路が増幅を行っている。オペアンプの役目は       あくまで仮想短絡のみ。(◯)        正しい考え方 <説明の流れ> オペアンプ回路...

「オペアンプは2つの入力の差を増幅する」は少し違う

  表題の「 」内の文言をあるところで見かけました。気になりましたので、これについて意見を書きたいと思います。屁理屈かもしれませんが、理解の妨げとなる可能性を秘めていると思います。 理解している人には許容できても、私の様な理解の遅い人にとっては細かな所がつまずきの原因となりますので、重要な問題だと思います。  まず、 オペアンプ(OP amp) 単体で 考えた場合、「2つの入力の差を増幅する」という表現は間違っている と思います。 確かに増幅はしますが、増幅率は無限大なのでHiかLoに張り付いてしまいます(飽和します)。即ち、入力の差がいくつであっても、それが1Vだろうが、0.1Vだろうが、0.0001Vだろうが、全てHかLになるだけです。 全部同じ結果になるものを増幅と呼ぶでしょうか? これはデジタル回路の入出力の関係と同じです。しきい値を少しても越えれば出力はHに、下まわればLに張り付きます。 しきい値と入力信号の差を、無限大に増幅しているわけです。 この「オペアンプは2つの入力の差を増幅する」は、オペアンプはそのような回路(システム)を組む為に使う、という意味で言っているのでしょう。 しかしオペアンプ単体が増幅させていると勘違いしてる人が沢山いるので、この表現はそれに拍車をかける事になります。 オペアンプは前述の通りコンパレータと全く同じですので、増幅という概念はありません。オペアンプは増幅機能を担うのではなく、仮想短絡を作り出す役目をしています。 そして仮想短絡と外付け抵抗の分圧の原理で増幅機能を作り出しています。 単体とシステムを切り分けず にごちゃ混ぜで説明してしまうと、 混乱する 人が続出します。   オペアンプの機能を大雑把に説明するとこうなるでしょうか。  ・オペアンプ単体の機能はコンパレータと同じである。  ・これを使って負帰還回路を構成する事で、仮想短絡(イマジナリショート)ができる。  ・仮想短絡を利用して、 2つの入力の差を増幅させる回路ができる   この場合の2つの入力とは、オペアンプ単体の入力端子のことではなく、オペアンプを使った増幅回路システムの入力の事です。 目次に戻る

電圧の本質

 電圧の大原則は、 二点間の差である という事です。電圧は「電位差」と「電位」に分けられます。 ・ 電位差: 任意の2点間の 差 ・ 電位:     アース(あるいは基準となる電圧)との 差 いずれにしても二点間の差 である事には違いありません。 「電位」と「電位差」の違いを理解する事は、電圧を理解する上で最も重要な事です 。 単なる定義の差ではなく概念としての差を理解する事が必要です。 例えば、二つの電源(No1、No2)がありそれぞれの+端子の電圧は10Vと20Vです。この端子同士を接続したらどうなるでしょうか? ショートする場合もありますが、ショートしない場合もあります。 電源No1の10Vは電位 差 を表しています。それは+と−端子間の 差 と言う意味です。 それは、山の標高に例えた場合、必ずしも標高10mと言ってるわけではありません。 麓が海抜40mの場所にある標高50mの山かもしれません。(差は10m) 同じくNo2も標高20mといってるわけではなく、麓が海抜30mの標高50mの山かもしれません(差は20m)。 であれば、No1とNo2の電位は両方とも50Vなのでショートは発生しません。しかし−端子を共通にした場合、+端子の電圧はそのまま直接比較できるので、10Vと20Vが接触した事になり、No1とNo2はショートを起こします。 このように、電位と電位差は同じものではないので、分けて考えないといけません。しかし、多くの場合、−端子は共通にしているので、電位と電位差を意識しなくても問題にならなく、この概念を認識できずにいる事があります。 絶縁体中での電圧の概念(電圧と位置エネルギーの相違点)  例えば絶縁体間の電圧を上げていくと最終的に絶縁破壊を起こし電流が流れます。一方で高度を高くしても物が落下しようとする力が強くなる事はありません。落下している物のエネルギーは大きくなりますが、 高度を上げたからと言って落下しようとする力 は変化しません。 ですので絶縁体の電圧は高度ではなく重量に似ています。 重量が重くなると橋が耐えられず崩壊するのは、電圧が高くなって絶縁破壊を起こすにのに似ています。 目次に戻る